【飲食店向け端末UX開発・こぼれ話①】UIへの漠然とした不満を解消。課題の洗い出しから伴走するPIVOT式スコープ設定
2023.11.24 (更新日 2023.11.24)
こんにちは。PIVOTのPR 大場です!
近年、急速に広まるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波、飲食業界も例外ではありません。タブレット等で、お客様自身が注文を行う「セルフオーダー端末」も飲食店DX化のひとつ。「最近、セルフオーダーを導入している飲食店が増えたなぁ」と感じている方も多いのではないでしょうか。
PIVOTでは、飲食店向けシステムの開発・販売を手掛ける日本システムプロジェクト様(以降、JSP様)にご依頼いただき、「回転寿司店向けセルフオーダー端末」のUX検討とデザイン制作に携わらせていただきました。
「老若男女が利用する飲食店のオーダーシステムを、デザインの力でより豊かなユーザー体験に結び付ける」というミッションは、PIVOTにとっても初の挑戦でした。今回は、本プロジェクトの主要メンバーである佐々木恵美さん、松原有花さんに、開発の裏側を2回にわたってお聞きします。
もくじ
きっかけは「UIに対する漠然とした不満」
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最初にJSP様からお話をいただいた経緯はどういったものだったのですか?
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佐々木
最初にお伺いしたのは、「セルフオーダー端末のUIに不満があるけど、どこをどう直したらいいのか悩んでいる」というお話でした。JSP様は30年以上にわたって飲食店向けシステムの開発をされていますが、今回は「飲食業界の考え方に縛られない、UIのプロに依頼したい」とのことで、PIVOTにお声がけいただきました。
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松原
当初は、「課題はあると思うけど、どう進めたらいいのか?どこまで頼めるのか?がわからないので、そこから相談したい」とのことでした。検討を重ねた結果、UXフェーズからデザインの制作をPIVOTが担当し、システム実装はJSP様、という役割分担で進めることになりました。
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これまでPIVOTが得意としてきたWEBやスマホ向けアプリとは、少し違う分野になると思うのですが、UIの明確な違いはありますか?
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佐々木
「使う人が使いやすく」という基本の考え方は変わらないので、環境はあまり関係ないのですが、セルフオーダー端末には「メニューを選んで注文する」という主要な操作目的がありますよね。注文するための操作・UIの快適さやスピード感は、最低限担保しなければならない要件で、こういったアプリをつくるのは初めてでした。
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松原
これまでは「使いやすい」「使って楽しい」「素敵に見える」ことを主軸にUIを考えてきたのですが、もっと生活に密着しているというか…。いかに主目的を邪魔せず、プラスアルファの要素を盛り込めるか、というところが課題だったと思います。
「実地調査」で見えてきた注文操作のストレス
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本プロジェクトでは、実際に回転寿司屋さんに出向いて調査を行ったそうですね。
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佐々木
はい。社内のメンバーにも協力してもらい、JSP様の端末を導入されている店舗はもちろん、競合他社や大手チェーンにも行ってもらいました。家族利用、友達利用、居酒屋使いなどの利用パターンもセグメント分けして、それぞれがオーダー端末でどのような使い方をするのか?を調査しています。
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実地調査で気づいたこと、UI開発に生かした点はありますか?
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佐々木
共通のニーズとしてあったのは「注文操作を中断されたくない」というものでした。注文操作の途中で、到着通知やおすすめなどの差し込みアナウンスがあると、ストレスを感じるという意見が多かったです。
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松原
意図していないタイミングでの情報提供は控える、という指針ができましたね。
さらに詳しく聞くと、「1回目の注文(ファーストオーダー)」は特に邪魔してほしくない、という要望が大きかったです。一番お腹が空いているし、お子さんがいるグループだと、できるだけ早く注文を済ませたいですよね。
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佐々木
逆に、2回目以降はゆっくり探す人も増えてくるので、そのタイミングなら差し込みの情報も受け入れられやすいんだな、と。
差し込み情報は、お店のおすすめだったりするのですが、「お店側の売りたい気持ち」と、「お客様のストレス」のバランスのとり方がUI上重要だと感じました。
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松原
あとは、会計に関する不安も多かったですね。食事中に、現在の総額が端末に表示されていなかったり、機能としてはあっても表示するための操作がわかりづらかったり…という不満が挙がってきました。
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佐々木
JSP様の顧客となるお店は、「グルメ回転寿司」と呼ばれる高級路線の回転寿司店が多いので、会計に関する部分は特に気をつけなければと思いました。ほかにも、この実地調査から生まれたアイデアも多いです。
ワークショップでサービスデザインを明確化
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本プロジェクトでは、JSP様に参加いただくワークショップも開催したと聞きました。ワークショップの目的を教えていただけますか?
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佐々木
ワークショップは、実地調査で抽出した潜在ニーズや改善点をもとに、目指すべきサービスデザインを浮き彫りにしていくことが目的です。ファシリテートはPIVOTが行いますが、基本的にはクライアント様が主体となってワークしていただき、実装すべき機能や優先順位付けを行っていきます。
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松原
ワークショップでは、JSP様が既にお持ちの資源やビジネス上の強みについての整理も行いました。「実地調査で判明したユーザーニーズ」と「クライアント様のビジネス資源・強み」を掛け合わせて、新たな価値を創出し得るサービスデザインを導き出すのがワークショップです。
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ワークショップを経て、JSP様側の認識に変化はありましたか?
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松原
調査とワークショップを経て、「まるでコンシェルジュに注文するように」オーダー端末を使ってもらえたらいいね、と目指すべきサービスデザインがかなり明確になりましたね。
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佐々木
操作に関するお客様のストレスを洗い出したことで、「初見でも迷わず使えて、スムーズに注文できる」ことの重要性を、JSP様、PIVOTの双方が認識できました。
調査とワークショップというステップを踏んだことで、関係者がコンセンサスをもって進められたのではないかと思います。
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松原
本案件に限らないのですが、このステップを踏むことで、クライアント様が気づいていなかった課題や、自社の強みが明文化され、サービスの輪郭がぐっと鮮明になると思っています。
PIVOTは、課題の明確化から伴走します!
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ご依頼をいただいた当初は、かなり柔らかい段階でのご相談でしたが、JSP様との共同作業でサービスデザインが明確になりました。
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佐々木
課題の明確化や優先順位付けといったところからスタートできたのは、結果的にとてもよかったと思います。今回は、JSP様にとっても、PIVOTにとっても初の試みが多かったので、なおさらですね。
「なんかUIがイケてない」というような漠然とした不満でも、課題の洗い出しからご協力できるので、お困りの方は、ぜひご相談いただきたいです。
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松原
生活に密着したUIデザインは、これまでPIVOTとしても事例が少なかったのですが、実地調査を行って新たな視点でUIをご提案できたのは、とても良い経験になりました。
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佐々木
環境の違いはあれど、「使いやすさを追求する」というテーマのど真ん中の仕事だと思います。
UIデザインを行う上で、いつも気を付けていたことが生かせたかな、と思います。
次回は、実際のUIデザインの工夫や、実地調査から生まれた新たな機能について、お話いただきます!
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