【UXリサーチ入門②】「こんなサービス欲しかった!」を見える化して、ビジネスをリデザイン!UXリサーチ活用事例をご紹介
2023.2.14 (更新日 2024.9.09)
すぐれたUXデザインをつくるために、ユーザーの隠れたニーズを知るプロセスが「UXリサーチ」です。前回の記事では、UXリサーチの概要をご紹介しました。
では、UXリサーチを活用するにはどのようにしたらよいのか。今回は、実際の事例を挙げながら、UXリサーチを活用したUXデザインの進め方をご紹介します。
お話は、前回同様PIVOTのUXデザイナー・松浦祐希さんです。
もくじ
インタビューは、“気づき”の宝庫
―実際のUXリサーチは、どのような手順で進めるのですか?
初めてのクライアント様の場合、まずはサービスの概要ヒアリングからはじめます。どんなシーンで利用されるサービスか、企画上想定しているマーケットの規模はどれくらいか。サービス提供側の「想い」も伺えるといいですね。
想定している利用者像については、インタビューリサーチの対象者になりますから、性別、年代、家族構成、経済状況といった属性から、どんな課題を持っている人なのか…という心情面まで、できるだけ詳しくお聞きします。
―リサーチの手段としてはインタビューが主とお聞きしましたが対象者や人数はどのように決めるのですか?
条件に合わせて対象者を選定することを「スクリーニング」というのですが、細かな設定条件やどのくらいの幅を持たせるのか?という選定基準、質問の内容は、ヒアリング内容を基にPIVOTで決めていきます。
人数については、対象となるサービスの内容やターゲット層によっても異なりますが、目安としては、1セグメント(性別・年齢・経済状況 などの属性)で3~5人、複数セグメントを対象とすると15~16人でしょうか。
広く取りすぎると「問い」が散漫になってしまうので、お客様の事業フェーズなども加味しながら、適切な人数を調整します。
―インタビュー当日の流れを教えてください。
インタビューは、基本1対1で30分~1時間じっくりお話を聞きます。インタビュー対象者がリラックスできるよう、クライアント様には、別室でモニターしていただいています。
潜在ニーズ×クリエイティビティが生み出す、新しいビジネスの形
―リサーチ後の動きを教えてください。
まずは、リサーチ結果をまとめる作業に入ります。レポートをお出しするだけでなく、ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップをクライアント様とワークショップをしながら作成する場合もありますね。
ここまでがユーザーの要求を知るモデリング作業、いわゆる「UXリサーチ」の部分で、このあとは、明らかになったニーズを基に「UXデザイン」を検討する段階に入っていきます。
―UXリサーチを経て、いよいよUXデザインの検討になるのですね。
このステップでは、クライアント様との議論を重ねながら、すでにお持ちの資産やポリシーと、実際のニーズがミートするところを探し、サービス・デザインに落とし込んでいきます。
PIVOTとしては、客観的にモデリングしたニーズを基に、クリエイティブな解決策をご提案できるように努めています。これは、UIや見た目のデザインに留まらず、ときには、当初のビジネスモデルからの転換をご提案する場合もあります。
UXリサーチが導き出した「本当にユーザーが求めていたこと」
―UXリサーチを行うことで、ビジネスモデルまで変わる?!
私が担当させていただいたなかに、ジュエリーブランド様の社内新規事業の例があります。クライアント様は地方都市で長く商いをされている老舗ブランドでしたが、新規事業として宝石のリフォーム事業を検討されていました。
―古いジュエリーの宝石を生かして、新しいデザインに仕立て直すんですね。
祖母や母から受け継いだものの、使わないまま箪笥に眠っている「箪笥ジュエリー」は、一説には60兆円もの市場があると言われていて、クライアント様は「今風にリデザインすることで、思い出の品を再び身に着けてもらいたい」という想いを持っていらっしゃいました。
当初は、ユーザーが『定型デザインの中から選ぶ』セミオーダーと、フルオーダーの2つを想定されていたのですが、UXリサーチを経て、フルオーダーのみに絞り、ユーザーが『デザイナーを選んで』オーダーできる形にサービスを転換することになりました。
―UXリサーチの果たした役割は、どういったものだったのでしょう?
見えているニーズとしては、
① 「大切なものをリデザインするので、『良いデザイン』にしてほしい」
② 「箪笥に眠っている宝石を使えるものにしたい」
という2つの要求がありました。
まずは、①の『良いデザイン』とはなにか?を分解するためにインタビューを行いました。1点1点違う宝石をリデザインするというサービスの性質上、注文前に完成見本品があるわけではありません。
では、「リフォームをお願いしよう」と決断するとき、利用者の方は何を見て決めるのか?その疑問が出発点でした。
リサーチしてみると、利用者が重視する点として
・「お店の雰囲気」
・「デザイナーの服装」
・「デザイナーの過去の作品」
という項目が挙がってきました。
この結果を、他の要素も踏まえながら分解していったところ、ユーザーにとっての『良いデザインにしたい』=「自分と好みが合うデザイナーにオーダーしたいというニーズではないか、と考えたんです。
競合サービスを見渡すと、宝石リフォームはお店を選ぶことはできても、デザイナーを軸に選ぶことはできないものがほとんどでした。そこで、ブランド側が決めた価値観にあてはめるリフォームではなく、お気に入りのデザイナーとの出会いを通じて、世界にひとつだけのジュエリーをオーダーできるサービス、というコンセプトができました。
さらに「箪笥に眠っている宝石を使えるものにしたい」という②のニーズについても、分解していくと「特別な日の宝石ではなく、日常使いできて身近に感じられるジュエリー」を望んでいるというニーズが見えてきました。
―深堀りすることで、コンセプトががらっと変化しましたね。
ニーズが見えたところで、改めてクライアント様の想いやUSP(独自の強み/ユニーク・セリング・プロポジション)を分析すると、クライアント様は宝石商社として商いをしてきた歴史が長く、その分、「目利き」には自信があることがわかりました。ですから、その強みを生かして日本全国の優秀なデザイナーの「目利き」に注力していただき、その結果
① 「自分の好みを理解してくれるデザイナーと一緒に」
② 「普段使いのジュエリーをリデザインする」
という、オリジナルなサービスが生まれました。
見た目のデザインだけじゃない、UXデザインの力
―サービス内容が変わると、ビジネスモデルも変わってきますね。
当初想定していた「テンプレートを選ぶサービス」は、マスに宣伝してボリュームで稼ぐ、というビジネスで、投資コストも大きく、競合大手企業の参入リスクもありました。PIVOTが提案したのは、コアな利用者を対象にクライアント様しか実現できない価値をコツコツと積み上げるモデルで、3年程度の中期成長戦略も踏まえてご提案をしました。
―クライアント様の強みと、ユーザーニーズがうまく合致した…ということでしょうか?
今回は、スタートアップのサービスだったことと、地域企業であるクライアント様の信頼感、ビジネスの強み・根幹を組み合わせた結果、このモデルになりました。
既存ビジネスの見直しの場合は、ここまでドラスティックな転換はできないと思いますが、UXデザインは、UIや見た目のデザインの話だけでなく、ビジネスの形も含めて考えていく必要があると思っています。
―今回のケースは新規事業でしたが、UXリサーチは、既存サービスにも活用できますか?
もちろんです。
例えば既存のサービスを改善したい場合に、仮説を立ててそれがユーザーに受け入れられるかを調査すること(受容性調査)にも活用できますよね。改修やリニューアルを行う前に受容性調査を行えば、システム開発費用の無駄を防げます。
うまくいっているサービスでも、成長を維持するためにはニーズの変化を見極めることが重要ですから、そういったケースでも、UXリサーチやUXデザインが力を発揮できるはずです。
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