人間中心設計(HCD)とは?UXとの違いから基本プロセスまでを“人間中心設計スペシャリスト”が解説
2026.7.7
もくじ
人間中心設計(HCD)とは?
人間中心設計(HCD:Human-Centered Design)とは、ユーザーを中心に据えて製品やサービスを設計する考え方です。
機能やシステムの都合から考えるのではなく、
「ユーザーはどんな状況で使うのか」
「どんなことに困っているのか」
「どんな体験を求めているのか」
といった、人の行動や感情、背景を起点に設計を行うことが特徴です。
人間中心設計は、国際規格「ISO 9241-210」においても定義されており、人と製品・サービス・システムなどが関わるあらゆる対象について、人間工学やユーザビリティの考え方を取り入れ、より良い体験を実現するためのアプローチとされています。
少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えば、「業務や利用文脈まで含めて設計する」と言い換えることができます。
多くの企業が取り組んでいるUI改善や機能追加ですが、見た目を整えたり機能を増やしたりするだけでは、必ずしも成果につながるわけではありません。なぜなら、ユーザーが本当に困っていることや、利用時の行動・心理まで捉えられていない場合が多いからです。
・ユーザーが本当に達成したい目的は何か
・ユーザーが迷わず使えるか
・ストレスなく目的を達成できるか
・継続して利用したくなるか
・ビジネスとしても継続的な価値を生み出せるか
といった、ユーザーとビジネス双方の価値を踏まえながら体験全体を設計していきます。
つまりHCDとは、デザインの手法というようなものではなく「ユーザー理解を起点に、より良い体験を設計するための考え方」なのです。
そして、私たちPIVOTでは、人間中心設計は単なる理論としてではなく、実際のプロジェクトにおいても重要な考え方として活用しています。
PIVOTには現在、6名の人間中心設計専門家/スペシャリスト資格取得者が在籍しており、UXリサーチや要求定義、UI設計、改善提案など、さまざまなプロジェクトに人間中心設計の考え方を取り入れています。
ユーザー理解を起点に、体験全体を設計することで、単なるUI改善にとどまらない、本質的なUX改善の実現をサポートしています。
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伊藤 環 Tamaki Ito
人間中心設計スペシャリスト/OOUX ストラテジスト / デザイナー
国内外の企業を経てPIVOTに参画。大規模業務システムからコンシューマー向けアプリまで、幅広いプロダクトの情報設計・UXデザインに従事。
人間中心設計と「UX」「UI」の違い
人間中心設計(HCD)を理解するうえで、よく混同されやすいのが「UX」や「UI」との違いです。これらはそれぞれ関係性の深い言葉ですが、指している範囲や役割は異なります。
たとえば、業務システムで考えてみましょう。
- 「ボタンの配置がわかりやすい」
- 「入力フォームが使いやすい」
- 「画面遷移がスムーズ」
といった要素は、UIに関する改善です。
一方で、
- 「業務を迷わず進められる」
- 「入力ミスや確認作業が減る」
- 「現場の負担が軽減される」
- 「ストレスなく業務を完了できる」
といった、利用を通じて得られる価値や体験はUXにあたります。
そしてHCDは、そのUXを実現するために、
- ユーザーはどこで迷っているのか
- なぜその操作が負担になっているのか
- 現場ではどのような業務フローで使われているのか
- 前後の業務や関係者とどのようにつながっているのか
を深く理解し、設計に反映していくための考え方です。
つまり、
「UI」は接点、「UX」は体験、「HCD」はその体験を実現するための設計思想、
という関係性になります。
近年では、「UI改善をしているのに成果につながらない」というケースも少なくありません。その背景には、見た目や操作性だけに注目し、ユーザー体験全体や、その背景にある課題まで設計できていないことがあります。だからこそ今、「UIを整える」だけではなく、“ユーザーを中心に体験全体を設計する”人間中心設計の考え方が重要視されているのです。
人間中心設計(HCD)の基本プロセス
人間中心設計(HCD)は、単に「ユーザーの声を聞く」だけではありません。
ユーザー理解から課題定義、設計、評価までを繰り返しながら、体験を改善していくプロセスそのものが特徴です。ISO 9241-210でも、人間中心設計は“反復的( iterative )”に進めることが重要とされています。一般的には、以下のような流れで進められます。
① ユーザー理解
インタビューや行動観察などを通じて、
・どのようなユーザーが利用するのか
・どのような状況・文脈で利用するのか
・何を達成したいのか
・なぜその行動を取るのか
を理解します。
表面的な要望ではなく、本質的なニーズやユーザー要求を明らかにすることが、このプロセスの目的です。
② 課題定義
調査結果をもとに、
- 「誰が」
- 「どのような状況で」
- 「何を達成したいのか」
- 「何が障害になっているのか」
を整理し、ユーザー要求を定義します。
その上で、ビジネス要件や業務要件も踏まえ、本質的な課題を明確にしていきます。
③ アイデア設計
定義したユーザー要求をもとに、ユーザーが理想的に目的を達成できる体験をイメージし、その実現に向けたコンセプトを検討します。
コンセプトをもとに、ユーザーがどのように行動し、目的を達成するのかという理想的なシナリオを描きながら、画面構成や導線、機能などのアイデアを具体化していきます。
- どのような体験を提供したいか
- ユーザーがどう行動できる状態を目指すか
を起点に設計を進めることで、単なる機能追加ではなく、「より良い体験につながるか」という視点でアイデアを検討できます。
④ プロトタイプ作成
設計したアイデアを、実際に触れる形にして検証します。
ワイヤーフレームや簡易モック、試作画面などを作成し、
ユーザーに近い状態で体験してもらうことで、
- 想定通りに操作できるか
- 迷いやストレスがないか
- 本当に課題解決につながるか
を確認します。
⑤ 評価・改善
最後に、ユーザーテストや利用状況の分析を通じて評価を行います。そして、人間中心設計で特に重要なのが、「一度作って終わり」ではないことです。
作成したコンセプトやプロトタイプが、ユーザー要求を満たしているかを評価、その結果をもとに…
- ユーザー理解を深め直す
- 課題を再定義する
- 設計を改善する
といったサイクルを繰り返しながら、継続的にUXを改善していきます。この“改善を繰り返すプロセス”こそが、人間中心設計の大きな特徴なのです。
人間中心設計専門家とは?
ここまで見てきたように、人間中心設計(HCD)は、単なるUI改善ではなく、ユーザー理解を起点に体験全体を設計していく考え方です。
しかし実際のプロジェクトでは、
・システムや開発の都合が優先されてしまう
・ユーザー調査が十分に活用されない
・要件定義が機能中心になってしまう
・部門ごとに判断軸が異なる
といった課題が起こることも少なくありません。
そこで重要になるのが、「人間中心設計専門家」の存在です。
人間中心設計専門家とは、ユーザー・ビジネス・開発、それぞれの視点を整理しながら、プロジェクト全体をユーザー視点で推進していく役割を担います。
単に“使いやすい画面”を考えるのではなく、
- ユーザーにとって価値があり、同時にビジネスとしても成立する体験は何か
- なぜその課題が発生しているのか
- どのような改善が本質的な解決につながるのか
を整理しながら、プロジェクト全体をユーザー視点で推進していく役割を担います。
PIVOTでも、人間中心設計専門資格を持つメンバーがプロジェクトに参画し、UXリサーチから要求定義、UI設計、改善提案まで一貫して支援しています。
また、実際のUX改善現場では、
「UIを改善しているのに成果につながらない」
「ユーザー調査をしているのに活かせない」
といった課題も多く見られます。
人間中心設計を成功させるポイント
人間中心設計(HCD)を実践するうえで重要なのは、単に「ユーザーの声を聞くこと」ではありません。
調査結果を改善施策や要件定義につなげ、調査結果を“気づき”で終わらせず、改善施策や要件定義へ落とし込んでいくことが重要です。
また、UX改善はデザイン部門だけで完結するものでもありません。デザイン、開発、ビジネスなど、関わるメンバーが「ユーザーにとってどうか」という共通の視点を持つことで、はじめて一貫した体験設計が可能になります。
PIVOTでも、人間中心設計の考え方をもとに、UXリサーチから要求定義、UI設計、改善提案まで一貫した支援を行っています。
まとめ
人間中心設計(HCD)は、単なるUI改善の手法ではなく、ユーザー理解を起点に“体験全体”を設計するための考え方です。
見た目や機能だけを最適化するのではなく、
「ユーザーがどのように使い、何を感じ、どんな価値を得るのか」
まで捉えることで、本質的なUX改善につながります。
UI改善だけでは成果につながらない――。
そんな課題を感じているときこそ、人間中心設計の視点が重要になるのです。
よくある質問(FAQ)
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Q:人間中心設計(HCD)とは何ですか?
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A:人間中心設計(HCD)とは、ユーザーの行動や課題、利用環境を理解し、その理解をもとに製品やサービスを設計する考え方です。
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Q:UXとHCDの違いは何ですか?
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A:UXはユーザーが得る体験そのものを指します。一方HCDは、そのUXを実現するための考え方や設計プロセスです。
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Q:人間中心設計専門家とは何ですか?
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A:人間中心設計専門家とは、ユーザー理解をもとに要件定義や設計、改善活動を推進する専門人材です。
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