【観光業界DX座談会①】地方創生の切札!観光業の未来はデジタルでどう変わる?
2024.2.26 (更新日 2024.11.06)
こんにちは。PIVOTコラム編集部の大場です!
国内旅行需要の高まりや、インバウンドの回復を追い風に、活況を呈している観光業界。旅行者の利便性向上や消費拡大を図るには、ネット上での情報発信が欠かせません。
PIVOTでは以前より、自治体観光PRサイトやホテルブランド、観光スポットなどのサイト・アプリ制作のご相談をいただく機会がたびたびありました。
今回はその中の一つ、地方自治体のPRサイト制作に携わった3人に観光業界のデジタル化について、ざっくばらんにお話を聞いてみました。
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鈴木 薫
UXデザイナー
PIVOTのデザイナーを束ねるオーガナイザーとして、デザイン・クリエイティブでPIVOTを牽引。
観光関連の案件にも多く携わる。 -
河村 恵実
アートディレクター/UIデザイナー
プロジェクトにまつわる事は自ら徹底的に調査・検証を行い、デザインに反映させていくスタイルを貫く。
観光サイトにおいても実際に訪問をして、現地の人たちや町の雰囲気を体感し、魅力を探求。 -
石田 文音
デザイナー
観光関連のプロジェクトではディレクションまで担当。
関係する市町村の担当者様との連携や、レクチャーの機会を通じて観光地の魅力を深く体得。継続的なプロジェクトにも携わり、観光地の魅力を日々発信中。
もくじ
県のサイトから小さな町の観光WEBサイトまで
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これまでPIVOTでは、地方自治体や観光協会をクライアントにしたサイトやアプリの制作を数多く手がけています。具体的にはどのようなサービス構築をされていますか?
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鈴木
一番多いのは、観光PRサイトでしょうか。都道府県が手がける県単位のサイトから、町や村単位のものまで、規模はさまざまです。地方自治体とは異なりますが、地域芸術祭の公式アプリや、中央省庁がクライアントとなる地域創生を目的としたサイトの構築も手がけています。
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規模も目的もさまざまですね。
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鈴木
最初はご紹介からのお話が多かったのですが、最近は、これまでの実績を評価いただくことが増えてきました。
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それぞれが関わったプロジェクトについて教えてください。
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鈴木
直近では、PMとして某県の観光PRサイトのリニューアルに携わりました。
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石田
私も同じプロジェクトで、ディレクター兼デザイナーを務めています。現在はリニューアルを終えて、改修・運用フェーズに入っていて、引き続き担当しています。
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河村
私は、小さい自治体のPRサイトから、県のエンタメ発信サイトまでいくつかのプロジェクトを経験しています。
観光PRサイトに求められること
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県単位の大きなサービスと、小さな自治体のサービスでは、求められるものが違いそうですね。
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鈴木
そうですね。
県の観光事業は、すなわち公共事業ですから、地域への利益貢献が求められます。そのためにも、より多くの観光客の方に、できるだけ長い時間滞在してほしい、というニーズが強くあり、KPI的にも求められるものがありました。
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たくさんのお客様を呼び込むためにはサイトに掲載される情報の豊富さや鮮度も課題ですよね。情報を集めるのも大変そうです。
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石田
このプロジェクトでは、県内にある20超の市町村のご担当者に、それぞれCMSを使って情報をUPいただけるように制作しました。
なので、自分たちで情報を集めるのではなく、お土産やイベント、観光スポットの情報を、各市町村の担当者さんに更新してもらって、内容を充実させて行く仕組みを構築しています。
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鈴木
CMSについては、各自治体での更新が可能なように権限の設定や、更新情報範囲の指定を仕様として定めています。
できるだけ更新がしやすいようにマニュアルを作成したり、説明会を開いて更新のフローをデモンストレーションしたりと、フォローアップにも力を入れました。
地方自治体だけでなく、観光業全体に言えることですが、情報の即時性と新鮮さが求められるので、情報の更新は先方で行えるように設計することが多いです。
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石田
サービス開始後しばらくは、担当者様向けのメールサポートも行っていました。
リニューアル後3年ほど経った現在も、活発に利用していただいていて、日々新しいコンテンツが増え続けています。また、膨大な情報をユーザーさんが見つけやすいように、タグ機能も追加するなど日々、利便性を向上させています。
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小さい自治体さんでは、サービスに求められるものは違いますか?
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河村
そうですね。私が携わったケースでは、宿泊率などのKPIというより、「まずは町のことを知ってもらおう」というところがスタートでした。町のことを知らない人にも魅力が伝わるようなサイトを目指しています。
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石田
現地まで足を運んだんですか?
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河村
はい!実際に行かないと、自然が育んだ豊かな河岸段丘の地形や、そこに住まう人々の営みと文化など、写真だけでは伝わりきらないものもたくさんあります。
でも宿泊して人や自然と触れ合ったり、農業体験をしたりすると、しみじみいいな、と感じるような魅力があるんです。
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鈴木
4~5回は現地に行ったよね。東京から4時間かかるけど…。地元の方とのワークショップをやったり。
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河村
町の人たちと一緒に「われらの町の魅力はこういうところだ」「われらの町の財産はこれだ」というのを、公民館に集まってもらってブレストするワークショップをやりました。
私たち外から来た人だけがコンテンツをつくるのではなくて、中の人にも地元のいいところを知って、価値を再定義してもらう、という意味もあります。
毎月現地に足を運んで、りんごの収穫体験をさせていただいたり、温泉に入ったり…すごく楽しかったです(笑)。そういう魅力を伝えたいなと思って、サイトをつくりました。
観光DXの未来
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今後、観光業におけるデジタル領域はどのように変わっていくと思いますか?
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鈴木
旅行客を呼び込んで、宿泊を含む周遊を促進するには、ネットでの情報発信はいまや欠かせません。
一方で、自治体によっては限られた人的リソースで運用せざるを得ない場合も多く、DX推進による生産性向上を図らなければ、現場が回りません。
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河村
生産性の向上に寄与するという意味では、業務の実態に基づいたCMSが挙げられると思います。
PIVOTがCMSをつくる場合は、「どういう手順で、どのロールの人が作業をして、承認までの流れはどうなっているか」といった業務フローを洗いざらいヒアリングして、UIの検討に入ります。最適なCMSなら担当者さんのオペレーションコストや学習コストをぐっと下げることができます。
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鈴木
国土交通省観光庁では、観光DX推進にあたって、地域における観光デジタル人材の育成・活用支援を謳っていますが、すぐには対応できない、というケースも多いと思います。
PIVOTのようなデジタル企業を活用しながら、両輪でデジタル人材の育成を進めていただけたらと思います。
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これまでの知見や経験が活きますね。
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河村
知見は蓄積されていますが、クライアント様の業態や関わる人数、リテラシーによって使いやすさは異なりますので、決まったテンプレートに嵌めて処理する、ということはなくて、各々の現場の状況に合わせて、ベストなご提案ができると思います。
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他産業ではAI活用の是非が検討されていますが、観光業ではいかがでしょうか?
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鈴木
観光サイトの場合、観光モデルコースをAIで作成する試みがはじまっていますが、精度についてはまだ研究中というところです
。観光モデルコースは、観光サイトにとって目玉となるコンテンツですが、モデルコース作成は、営業時間や移動、食事、など様々な情報が絡むため作成には、情報の収集および、精査するなどの時間が必要です。AIを利用することで、生産性を向上させたい、というニーズは高まっているので、今後改良、研究が進めば、可能性が広がってきますね。
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石田
現状では、食事休憩等の時間的余裕を勘案したり、東西南北に長いエリアで踏破可能なコースをつくったり…などの実用面の制度が不足しているのですが、、ChatGPTを利用するAIなど、今後もどんどん新しいサービスが登場していくと思います。
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ありがとうございました。
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