UXデザインにおける“構造化シナリオ”の効能 ――カスタマージャーニーを超えて見えてきた“本当の課題”の、その先へ

人間中心設計専門家 松浦祐希
松浦 祐希 Matsuura Yuki PIVOT執行役員 人間中心設計専門家 UX Designer/Information Architect

2025.7.22 (更新日 2025.9.4)

UXデザインにおける“構造化シナリオ”の効能 カスタマージャーニーを超えて見えてきた“本当の課題”の、その先へ

最近では、UXデザインの現場で「カスタマージャーニーマップ」や「サービスブループリント」を活用することが増えてきたように感じています。ユーザーの行動や感情の流れを可視化し、現状の体験を理解する上で、非常に有効なツールです。

ただ、これらの手法だけでは、「では、どういう体験をつくればいいのか?」という問いに応えるには限界があります。PIVOTでは、そうした“理想の体験”を構想する際に、まずはエスノグラフィー調査を通じて現場のリアルな状況を把握することを重視しています。観察・インタビュー・体験を通して現場の文脈をつかむことで、ユーザーに本当に寄り添った設計が可能になるからです。

では、その“リアル”から「未来の理想の体験」をどう描くか?そこで活躍するのが、構造化シナリオ(Structured Scenario Method)です。※理想の体験を描く前提として、まず“現場の実情を深く理解する”ことが欠かせません。

 

 

エスノグラフィー調査を通じて得られる知見については、こちらのコラムも合わせてご覧いただくと理解がより深まります!

 

 

👉 DXの成果を最大化するUX戦略—エスノグラフィー調査で見える“本当の課題”

この記事を書いた人
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    松浦 祐希 Matsuura Yuki

    PIVOT執行役員 IA / UXデザイナー 人間中心設計専門家

    ディレクター、UIデザイナーの経験を経て、よりプロダクトの設計に特化すべくインフォメーションアーキテクチャを中心に活動。
    人間中心設計のデザインプロセスを導入したプロジェクトプランニング、要求定義~プロダクト設計の実行を得意とし、多くのプロジェクトを担当。

もくじ

構造化シナリオとは――体験を“構造として”設計する

構造化シナリオとは、ユーザーの状況、行動、思考、感情といった一連のプロセスを「物語」として構造化する手法です。
単なる業務フローや操作手順ではなく、「どのような意図で・どのような順序で・どのような心理で」ユーザーがサービスと関わるのかを詳細に記述していきます。

構造化シナリオ関連ドキュメントサンプル

構造化シナリオは、単なる理想像の空想ではなく、「現場のリアルな課題に根ざした設計」を実現するための実践的なツールです。

 

PIVOTでは、構造化シナリオを「人間中心設計」の考え方に基づいた、実践的な設計ステップとして活用しています。ただ現状を分析するだけでなく、「何が理想か」「どうすれば実現できるか」を具体的に描くことが重要だと考えているからです。

作図 ダミー

エスノグラフィーと構造化シナリオ——補完し合う2つの視点

PIVOTでは、業務改善やシステム設計のプロジェクトにおいて、エスノグラフィー調査で「現場のリアル」を深く理解するところからスタートします。

 

  • 業務フローや現場の“師匠の工夫”を発見
  • 属人的なノウハウやストレスポイントを可視化
  • システム化に必要な要素を、ユーザー視点で洗い出す

この調査結果をもとに、次に進むべきは「どうすれば理想的な体験を設計できるか?」の検討です。

ここで活躍するのが構造化シナリオです。

 

たとえば、「新人でも迷わず使える業務システムを実現したい」というゴールがあるとします。

このとき、ベテランの観察から得られた知見を基に、“新人ユーザーが初めて業務に触れる場面”をシナリオ化することで、適切なナビゲーションやエラー回避の仕組みが設計可能になります。

いつ使うべき?実践導入のポイント

構造化シナリオは、以下のような場面で特に力を発揮します。

 

  1. 構想段階(コンセプト検討期)
  • 新サービスや機能の「あるべき体験」を描く
  • 関係者間で“理想のユーザー像”や“体験のゴール”を共有する
  • アイディエーションの出発点として活用

 

  1. 検証段階(リサーチ・改善期)
  • 観察やユーザビリティテストの結果をシナリオに反映
  • ユーザーの失敗体験や困難を、改善設計に直結させる
  • 改善後の体験像をストーリーとして描き、再検

 

このように、構造化シナリオは“アイデア出し”にも“検証と改善”にも活用できる柔軟なツールです。

おわりに:体験は、描くことでデザインできる

ユーザー中心設計の本質は、“理解”だけでなく、“創造”にまで踏み込むことです。
構造化シナリオは、エスノグラフィー調査によって得られたリアルな情報を、実際の体験設計へとつなげる架け橋です。

 

現場を知ることが、スタート地点!
理想の体験を描くことが、ゴールに向かう手段!

 

カスタマージャーニーの“可視化”だけではたどり着けない領域に、構造化シナリオは道を拓いてくれます。
私たちPIVOTは、現場に根ざした体験設計を通じて、より多くの「使いやすく、愛用し続けたくなる」サービスをサポートしています!

【簡単チェック】体験設計、描けていますか?

チェックリスト__構造化シナリオ

現場のリアルを理解し、理想の体験を描くために欠かせないのが「構造化シナリオ」。

あなたのチームは“体験を描く準備”が整っているでしょうか?そこで役立つのが「体験設計、描けていますか?」チェックリスト です。
5つの質問に答えるだけで、いまのプロジェクトが理想の体験設計に近づいているかを簡単に自己診断できます。

ぜひ以下からダウンロードして、ご活用ください!

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