「可視化できていない」が最大のリスク? レガシーシステム刷新で起きる“ブラックボックス問題”の正体

黒川 敬人 Kurokawa Takahito 営業・マーケティング担当

2025.12.11 (更新日 2025.12.11)

可視化できていない」が最大のリスク?

レガシー刷新が思うように進まない背景には、“技術”ではなく“見えていない構造”があります。


本記事では、ブラックボックス化がなぜ起きるのか、その正体と危険性、そしてまず着手すべき「可視化」のポイントを、実例ベースでわかりやすく解説します。システム刷新に関わる方が、最初に押さえておくべき“つまずき回避の視点”をまとめました。

▼こんな人におすすめ

  • レガシー刷新の進め方がわからず、最初の一歩に迷っている方

  • 要件整理や関係者との合意形成がうまくいかない方

  • システムの全容が見えず、“ブラックボックス”に不安を感じている方

  • 手戻りやコスト増が続き、改善のヒントを得たい方

もくじ

なぜレガシー刷新は“難易度S級”なのか?

レガシーシステムの刷新と聞くとどんなイメージがありますか?

「古いシステムを新しいものに置き換えれば解決する」と思われている方も多いのではないでしょうか。

しかし、PIVOTにご相談いただく多くの企業様の例をみると、つまずくポイントは“技術”ではない事ばかり!(意外ですよね?!)

 

本当のつまずきの原因は“人と組織にひそむ見えない問題” なのです。

 

たとえば、担当者が全体像を説明できない、運用が属人化している、意思決定プロセスが不透明になっている…こうした状況は、システムの老朽化に加えて、情報共有の仕組みや組織の判断構造にも課題があるサインです。

 

経産省/デジタル庁及び独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年に発表した「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート※」でも、この“見えない問題”がレガシー化の本質だと指摘されています。
同レポートによれば、日本企業の61%がレガシーシステムを保有しており、そのレガシーの定義には、

ドキュメント不足
運用の属人化
設計意図の不可視化

レガシーシステムモダン化委員会総括レポート

引用元: https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html

といった “技術以外の課題” が含まれると明記されています。

 

つまりレガシー化とは「見えないものが多すぎる状態」と、PIVOTでは捉えています。
技術リプレースよりも前に、まず向き合うべきはこの“不可視化”!

失われた設計意図や属人的な運用は、コードの書き換えでは解決できません。だからこそ、レガシー刷新は難易度が高い。

刷新の出発点は「技術更新」ではなく、まず “組織の透明化” にあるのです。

ブラックボックスはどのように生まれるのか?

ブラックボックスはどのように生まれるのか

レガシー刷新の最大の障壁が、いわゆる “ブラックボックス化”。

「そもそもこのシステムの全容を知っている人が誰もいない」という状態です。

 

長年システムを運用していく中で、主に次の3つの積み重ねによりブラックボックス化が進行していきます。

① 仕様の共有不足(現場・情シス・経営の“分断”)

前述のIPA(総括レポート)では、現場は現場、情シスは情シス、経営は経営――三者が別々の前提で話してしまうケースは少なくありません。
総括レポートでも、

経営層との情報共有やCxO設置の状況と、IT資産の可視化・内製化の状況に有意な相関がある

レガシーシステムモダン化委員会総括レポート

引用元: https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html

ことが示されています。
要するに「何がどうなっているか」の共通認識が揃わないと、優先順位や投資判断が定まらず、モダン化の打ち手を選びにくくなるのです。

② 非公式ルール・属人的運用の積み重ね

「この画面はこう操作するのが暗黙ルール」「Excelで別途チェックしてます」など、現場で生まれた“小さな工夫”が積み重なると、システム刷新の大きな落とし穴になります。

 

公式のフローには載っていないけれど、日常業務では必須。こうした“非公式ルール”が山ほど出てきて、後から刷新プロジェクトを混乱に陥れます。

③ 追加開発の積み重ねによる構造の迷子化

要望が出るたびに機能をつぎ足し、仕様書が更新されないまま開発が進む――これが繰り返されると「なぜこの画面が存在するのか」「何と連動しているのか」を誰も説明できなくなります。

IPAの総括レポートでは、レガシー化の要因として

「システムの肥大化・複雑化(システムが巨大・複雑で、機能の追加・変更が困難)」

「ブラックボックス化(仕様や設計のドキュメントが整備されておらず、新システムへの移行や再構築時に支障/運用維持保守が属人的な状態に陥っている)」

レガシーシステムモダン化委員会総括レポート

引用元: https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html

が挙げられています。
要望のたびに機能をつぎ足し、仕様が追いつかない状態が続くと、「なぜこの画面が存在するのか」「何と連動しているのか」を説明できなくなり、まさにブラックボックス化を招きます。

 

ブラックボックスの正体は、“技術の古さ”ではなく“情報の透明性を失った状態”だと、PIVOTでは捉えています。

可視化されていないと何が起こる? ― 5つの負の連鎖

ブラックボックスを放置したまま刷新を進めると、どこかで必ず行き詰まります。
そしてその影響は、驚くほど広範囲に広がることも…!

 

可視化されていないと何が起こる5つの負の連鎖

① 意思決定が止まる/迷走する

仕様が見えず何を優先すべきか判断できません。
関係者が“違う地図”を見て議論しているような状態なので、意思決定のスピードも質もガタ落ち…

② UXデザイン/UIデザインの一貫性が崩れ、ユーザビリティが下がる

画面ごとにルールが違ったり、同じ意味のボタンなのに位置が違ったり――。
情報構造の不統一は、現場のストレスとミスにつながります。

③ 手戻りが増え、開発コストが跳ね上がる

可視化不足のまま決めた仕様は、後から矛盾や漏れが発覚しがち。
刷新の後半で“大工事”が発生し、コストも工数も増大します。

④ DX・新規施策が遅れる

ブラックボックス化したシステムは、影響範囲が読めないため、新しい取り組みを進めにくい。
データ連携、AI活用、自動化…どれも慎重にならざるを得ません。

⑤ 現場のモチベーションが下がる

「なぜこんな操作が必要なのかわからない」状態が続くと、改善への期待も薄れていきます。
ブラックボックスは、気づかぬうちに“人の気力”も奪うのです。

まとめ ― レガシー刷新の第一歩は“可視化”から

レガシー刷新は、一見すると技術を新しくするプロジェクトのように見えます。でも実際につまずくのは、技術ではなく“見えない部分”です。

 

仕様、業務フロー、設計意図、現場の実態――。

 

これらが不透明なまま進めれば、判断は揃わず、議論は迷走し、現場の負担だけが増えていきます。だからこそ、刷新の出発点は 技術選定ではなく“可視化” です。

 

現場で何が起きているのかを捉え、情報と業務の流れを整理し、関係者全員が同じ前提で話せる状態をつくる。これができた瞬間、レガシー刷新はようやく前に動き始めます。

 

UXプロセスは、この“可視化”を短期間で実現できる強力なアプローチです。最新技術を導入する前に、まず組織の視界をクリアにする。小さな可視化の一歩が、大きな刷新の成功へとつながります。

簡単チェック!あなたのシステム、実はブラックボックス化してない?

レガシー刷新前に確認すべき“可視化チェックリスト”

 

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まずは3分でできる“可視化チェック”から始めませんか。

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現場リサーチから段階的に進める刷新プロセスを、具体例とともに解説します。

 

●テーマ:レガシーシステム刷新を“現場起点”で成功に導く――UXでひも解く課題発見と再設計のプロセス
●日時:2025年12月17日(水)11:00〜12:00
●会議ツール:Microsoft Teams
●参加費:無料(事前登録制)

 

▼参加登録はこちらからどうぞ!

https://events.teams.microsoft.com/event/12941e67-05ff-4f00-b79a-6d6b26fac2aa@75aea1b3-5ccf-4af6-948d-d9eb51f1c4f1

 

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